皆様、こんにちは。私は2013年から6年半、中国で仕事をしていました。「良かれと思って」仕事を手伝ったら、「それはあなたの仕事じゃないでしょう!」と激しく叱られるなど、最初は仕事の進め方に戸惑うことばかりでした。今回はそんな中国で戸惑ったエピソードの中から、「昼休み事情」についてご紹介します。

1. あと少しでキリがつくのに「仕事より昼食」

中国で新工場建設のプロジェクトに携わっていたときのことです。「工事の現場確認に立ち会ってほしい」と言われ、中国人スタッフ、装置メーカー、工事会社のメンバーと一緒に、午前中から工場内の現場を見て回りました。確認するのは10ヵ所以上あり、要求した通りに施工されているかどうかなど、順に確認していきました。

あと2ヵ所確認したら終わりというときになって、中国人スタッフが「昼ご飯の時間だ」と言ってきました。
「え? あと2ヵ所でしょ。15分くらいで終わるから、全部見てからお昼にしようよ」と私が言うと、彼は「昼から、また来て見ればいいです」と言うのです。
「いやいやいや、事務所から工場まで移動して、クリーンスーツに着替えるだけでも時間かかるんだし、昼からまたわざわざ来るなんて、面倒でしょう? 午前中で終わらせようよ」

私はそう言って、なんとか午前中で仕事を終わらせようと主張しました。今ここで終わらせておけば、午後から別の仕事に集中できます。しかし、中国人スタッフから「昼ご飯の方が大事です」と言われたら、従わざるを得ません。
「無駄な時間が増えて、効率が悪いな」と感じました。しかし、実は中国人にとって食事はとても大切なものなのです。

2. 「ご飯食べた?」が挨拶がわり

中国では知り合いや友人と出会った時に、「吃饭了吗?(チーファンラマ)」 (ご飯食べた?)と聞くのが挨拶の代わりだと言われたことがあります。

中国人は食事をとても大切に考えています。中国では何度も戦乱を経験してきたという歴史的背景に影響されているからだそうです。つまり、「ご飯を食べることができた」ということは、「無事である」「元気でいる」ということを意味するからです。

私は日本で働いていたときには、「食事の時間を削ってでも仕事を片付けよう」とか「さっさと食事を済ませてしまおう」というように、食事の時間をそれほど大切に考えていませんでした。中国で初めて、「食事ができることの有難さ」「みんなで食事の時間を楽しむというのは、気持ちの余裕につながっていく」ということがわかりました。

「食事は大切」と考えているからでしょうか。私が勤めていた中国の国有企業では、日本人社員向けに週1回、「日本食弁当」を提供してくれていました。

日本人社員のために食堂が用意してくれた「日本食弁当」

「日本食弁当」といっても、写真のような弁当で、味付けも食材も中国風でしたが、「異国の地で働く日本人のために」という気持ちが嬉しかったですね。海苔を使ってパンダの顔をつくっている様子を想像すると、中国人の優しさを感じて、心が温かくなったものです。

3. 「昼一番」は「午後2時」

日本で「昼一番に」というと、たいていは午後1時または1時半ですよね。中国で仕事をし始めた頃、日本と同じ感覚で、午後からの会議を1時半開始に設定したら、中国人に「2時からにして」と言われることが何度もありました。どうやら昼休みモードから「さぁやるか」というモードに切り替わるのが2時らしいのです。

中国人と同じ部屋で仕事をするようになって気づいたのですが、彼らは昼食を終えて事務所に戻ってくると、必ず昼寝をしていました。日本でも最近は、昼寝をした方が疲労回復や生産性の向上に効果があると言われていますが、まだまだ習慣として定着しているとは言えません。でも、中国ではほとんどの人が食事後に昼寝をしています。中には、昼寝をせずに、スマホでゲームをしたり、動画をみたりしている人もいますが、基本は皆、デスクの上に突っ伏して寝ています。いびきをかいて、ガッツリ寝ている人もいます。

昼休み終了のチャイムが鳴ると、皆昼寝から起き、まずお茶を飲みます。そして、「さぁ、もうひと頑張りするか!」とエンジンがかかり始めるのが、だいたい午後2時なのです。

このように、仕事よりも昼食や昼寝を大切にしている中国人ですが、もちろん仕事を優先するときもあります。

水漏れなどのトラブルが発生し、対応に追われて昼食どころではないということが、私の職場でも何度かありました。そういうときは、上司が食堂へ連絡して、現場対応している人数分の食事をとっておいてもらうように頼んだり、売店でパンなどを買っておいたりしていました。ちゃんと皆が食事をとれているかどうか、とても気にしている様子でした。

もし、皆様の中で中国人と一緒に働いている方がいらっしゃいましたら、ぜひ昼休みの過ごし方を観察してみてください。そして、お昼の時間でも仕事をしている中国人を見かけたら、「吃饭了吗?(チーファンラマ)」 (ご飯食べた?)と声をかけてみてはいかがでしょうか。きっと喜んでくれることでしょう。