1 はじめに

ジャカルタとその近郊で暮らす日本人にとって大きな悩みの種の1つが、「休日に何をして過ごすか」です。これがバリ島だとリゾート地ならではの多くの楽しみがあるのですが、ジャカルタなどの都市部ではそのような場所へのアクセスが限られいるので、積極的に娯楽を探しに行く必要があります。

インドネシアに限らず、何かとストレスを感じやすい外国生活では、オフの過ごし方はとても重要で、充実した海外生活を送れるかどうかは、休日にいかにストレスを解消できるかにかかっていると言っても過言ではありません。

そこで、本レポートでは、ジャカルタ及びその近郊に在住の日本人に人気の休日の過ごし方をご紹介したいと思います。

2 娯楽その①・ゴルフ

海外生活者の娯楽の王道と言えばゴルフですが、インドネシアもその例に漏れることはありません。ジャカルタ郊外だけでなく、都心にもナイター設備を備えたゴルフ場が数多くあり、料金も日本と比べてリーズナブルなので、気軽にゴルフを楽しむことができます。打ちっぱなしや日本人レッスンプロによるゴルフ教室もあり、初心者でも始めやすい環境が整っています。

難点は気候で、日中の高い気温と強い日差し、雨期のスコールは多くのプレイヤーをベストスコアから遠ざける最大のハザードです。そのため、多くの場合、日の出やその前からスタートし、日が高くなる前にホールアウトしているようです。

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ジャカルタ市内の打ちっぱなし場の様子。このようにスタッフが球を常に拾っているので、当てないよう神経を使います。

3 娯楽その②・釣り・ダイビング・シュノーケリング

ジャカルタ北部はジャワ海に面しており、港から沖釣り用や近海の島に行く船が数多く出ています。沿岸部はゴミなどであまりきれいな状態ではありませんが、船で1時間ほど沖に出ると、インドネシア語で「千の島」を意味する「プラウ・スリブ」(pulau seribu)と呼ばれる、サンゴとその周りの魚がはっきり見えるほど澄んだ海に囲まれた島々にたどり着くことができ、堤防釣りやダイビング・シュノーケリングを楽しむことができます。

私は残念ながら沖釣りは未体験ですが、初心者でもタイやハタといった高級魚が比較的よく釣れるということで、経験豊富なアングラーと一緒にチャレンジしてみる方も多いようです。

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プラウ・スリブの海の様子。ジャカルタから船で1時間のところでこのような美しい海を楽しむことができます。熱帯魚も多く生息しており、シュノーケリングでも十分に楽しむことができます。

4 娯楽その③・ハイキング

北部が海に面しているのに対し、ジャカルタの南側は山に面しています。

ジャカルタから高速道路で1時間ほどで行けるボゴールは、標高約3000メートルのグデ山(ジャワ語で「大きい」という意味)をはじめとする山岳地域で、朝夕の涼しい気候が特徴的です。そのため、避暑地として人気で、「インドネシアの軽井沢」とも呼ばれるほど多くの別荘があります。

また、ボゴールの中心エリアには大統領宮殿もあり、特に海外から要人が来た場合などは、ジャカルタの大統領宮殿ではなくボゴールの大統領宮殿に招待することがよくあります。今年1月に石破総理がインドネシアを来訪した際も、プラヴォオ大統領は総理をボゴールの大統領宮殿に招き、首脳会談を行いました。

山岳エリアであるボゴールは豊富な山林資源があり、ハイキングやトレッキング、キャニオニングなどのアクテビティが人気です。また、貴重な生物の生息地でもあり、サファリパークではオランウータンなど様々な動物が見られるほか、カブトムシやクワガタムシなどの昆虫採集も人気で、運が良ければ「最強のカブトムシ」とも言われる「コーカサス・オオカブト」にも出会うことができるそうです。

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ボゴールにあるサファリパークにいるオランウータン。赤ちゃんに直接触れ合うこともできます

5 娯楽その④・ショッピング

 ジャカルタ市内には大型ショッピングモールが至る所に存在しており、休日ともなると多くの人がショッピングや食事などをしにモールを訪れます。

西ジャカルタ市にある「モール・タマン・アングレック」(Mal Taman Anggrek)は世界で12番目に大きいショッピングモールで、小売店や飲食店だけでなく、スケートリンクや映画館、IKEAなどが入っている大型複合施設です。

インドネシアは、日本と異なり、ハイブランドの路面店やデパートが単体で存在することはまれで、そごうや西武といった日本でもおなじみのデパートがショッピングモールのテナントの1つとして数フロアで営業をしていることが多いです。

また、イオンモールも現在5店舗がジャカルタ又はその近郊で営業をしており、日本人だけでなくインドネシア人にも人気スポットとなっています。

6 娯楽その⑤・ゴルフ以外のスポーツ

 バドミントンはインドネシアの国技とも言うべき人気のスポーツの1つで、職場でバドミントンクラブを創設したり、バドミントンコートを設けたりする企業も珍しくありません。昨年のパリオリンピックでもバドミントン競技でメダリストが誕生していますし、桃田選手など日本の有名選手はインドネシアでも抜群の知名度を誇ります。 

また、テニスやランなども人気です。毎週日曜午前にはジャカルタの中心にある「スディルマン・タムリン通り」でカーフリーデーが実施され、多くのランナーが日頃車とバイクで埋め尽くされている大通りを縦横無尽に走っています。

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日曜日のタムリン通りの様子。普段はこの通りには車やバイクで埋め尽くされていますが、日曜午前だけカーフリーデーとして人や馬が走ることができます。

6 娯楽その⑥・習い事

 現地日本人会である「ジャカルタ・ジャパン・クラブ」(JJC)は、世界無形文化遺産にも登録された伝統音楽「ガムラン」やバリ舞踊といったインドネシアならではのものから、ソフトボールやサッカー、合唱などの定番まで、様々なクラブ活動を行っており、多くの日本人が参加しています。JJCによるもの以外にも、数多くのサークルやクラブがあり、日本人同士やインドネシア人コミュニティとの交流の場になっています。

私は、インドネシア人シェフによるインドネシア料理教室やバリ舞踊教室を体験しましたが、インドネシア文化に触れることができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。また、語学学校も多くあり、インドネシア語や英語などを学ぶことも可能です。

7 娯楽その⑦・カフェ・グルメ

 インドネシアのグルメというと、インドネシア語で「焼き飯」を意味する「ナシゴレン」(nasi goreng)やインドネシア版焼き鳥の「サテ」(sate)などが有名ですが、その他にも2017年にCNNが「世界で最もおいしい料理」と認定した牛肉の煮込み料理「ルンダン」(rendang)や、一昨年グルメサイトで「世界のスープベスト10」で日本のラーメンを抑えて1位となった牛肉の黒コショウスープ「ラウォン」(rawon)など、様々な名物料理があり、ジャカルタではこのようなインドネシア各地の料理を楽しむことができます。

個人的におすすめしているのはコーヒーで、インドネシアは、ブラジル・ベトナムに次ぐ世界第3位のコーヒー豆の産地で、最も品質が良いとされる「アラビカ種」が各地で栽培されているのが特徴です。

コーヒーはインドネシア文化の一部になっており、日本で「お茶をする」と言うのと同じように、インドネシアでは「コーヒーをする」(mengopi)という言葉が「カフェや喫茶店に行く」という意味で使われています。また、ジャコウネコが未消化で排出したコーヒー豆を洗浄・焙煎した「コピ・ルワク」(kopi luwak)も有名で、この貴重なコーヒーも比較的手ごろな値段で味わうことができます。

 また、インドネシアでは日本食も大人気で、各ショッピングモールなどでは日本の飲食チェーンが数多く入っていますし、「ラーメン」、「うどん」、「すし」、「しゃぶしゃぶ」など日本の料理はそのまま通じます。東海地方の方にはおなじみの「すがきや」や「Coco壱番屋」もあり(ただし、イスラム教徒に配慮して豚は使っていません)、インドネシアにいながらにして日本の味を楽しむこともできます。

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ショッピングモール内の日本食チェーン。「うどん」はそのままで通じるほどインドネシアの食文化に浸透しています。

7 娯楽その⑧・旅行

東西約5100キロメートルにも及ぶ約1万7000の島で構成されるインドネシアには、約300の民族からなる約2億8000万の人々が生活しています。

「5100」、「1万7000」、「2億8000万」、この3つの数字だけを見ても、インドネシアが日本と大きく異なる国であることがわかりますが、インドネシア各地に旅行に行くことは、もはや海外旅行と言っていいくらい、全く異なる文化・社会に触れられる体験です。

 私は、これまで、世界有数のリゾート地であるバリ島だけでなく、そのすぐ東にある美しい海でおなじみロンボク島(Lombok)、コモドドラゴンで有名なコモド島(Komodo)、多くの川が張り巡らされ「インドネシアのベネチア」とも呼ばれるバンジャルマシン(Banjarmasin)、海洋・漁業都市マナド(Manado)、そして世界遺産ボロブドゥール寺院で有名な古都ジョグジャカルタ(Yogyakarta)など、インドネシアの各地を訪れ、豊かな自然や文化に触れてきました。

日本にいると中々行くことができない場所にも飛行機や鉄道で気軽に行けるのがジャカルタ在住の良いところです。休暇シーズン明けになると各地のお土産が職場に並ぶというのもジャカルタ在住者にとってよくある光景です。

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コモド島でコモドドラゴンと撮影。レンジャーの案内により安全な場所から撮影しています。

8 おわりに

いかがでしたでしょうか?ジャカルタは「娯楽がない」と言われることが多いですが、こうして思いつくものを挙げただけでも、様々な休日の過ごし方があることがおわかりいただけたと思います。

こうしたインドネシアの魅力は、現地在住者だけでなく、出張や旅行で訪れた際にも触れることができます。もしまだインドネシアにいらっしゃったことがないという方は、一度訪れてみてはいかがでしょうか。活気とエネルギーにあふれるジャカルタの空気に触れるだけでも、大きな刺激を受けるのではないかと思います。