前書き

皆さま 日頃は弊海外事業支援センター・アドバイザーによる海外駐在時の思い出、 名所・旧跡の紹介、 現地での旨いもの食べ歩き等のレポートを興味深く読んでいただき感謝申し上げます。

読者の皆様方のとっては 海外駐在員と言うのは各国のそう言った異文化に触れることができて本当にうらやましいと感じる方も多いのではないかと推察します。確かに海外駐在員は現地の文化を理解し現地に溶け込むために まずは現地の食べ物を食し 現地の名所・旧跡を訪ね日本からのゲストに紹介できるように観光ガイド役ができるように勉強するのが常だと思います。

しかしながらこう言った一見気楽に見える駐在員生活の中にも、海外ならではのトラブル・アクシデントがつきものなのです。今回は 海外駐在員生活にまつわる影の部分について、 私がマレーシア・ペナンで駐在した(2005年~2008年)の事例をご紹介したいと思います。

スパイダーマン

私は3階建てのアパートに住んでいましたが 日本人の同僚は20階建てくらいの19階コンドミニアムに住んでいました。建物の入り口にはガードマンが配置され、それなりにセキュリティーは保たれているような物件でした。

ところがです。彼は一見安全そうに思えたアパートで盗難にあってしまったのです。当然 玄関のカギは締めてあったのですが、なんと盗人は外の窓側から洗濯物を干すために少し開けてあった窓から侵入したのです。スパイダーマンの様に!

もちろん 足を踏み外せば真っ逆さまに転落です。彼はパソコンと・現金を盗られました。帰国直前に起きた、まさかと思うような手口に、本人はもとより、一同啞然としたものでした。

具体的な侵入手口

① エントランスより、高さ1mほどの壁をよじ登る。
② 鉄格子は部屋の2mほどのところまでしかなく、何も無いところより鉄格子伝いに洗濯場まで伝っていく。
③洗濯場は、鉄格子の窓枠があり。
④鉄格子窓には施錠=鍵なしで針金を巻いてあった。 針金をほどいて侵入された。
※エントランスからは洗濯場の施錠状態が見えていたとのこと。

当時はこのような命知らずの盗難が相次ぎ、コンドミニアムの入室管理もカードキー方式に変更されたようです。又、盗難は個人住宅に限らず、取引先のオフィイスも盗難にあい、パソコン、プリンター等の電子機器が全て盗まれた事例もありました。

ここまでの大掛かりな窃盗でなくとも海外出張者、旅行者が被害に遭いやすいのが、スリ、置き引きの類です。彼らは、日本人旅行者だと分かると後をつけ、 一瞬のスキを狙い犯行に及びますので、くれぐれも手荷物の管理については、日本とは全く違うという認識を持つ必要があります。

交通事故

マレーシアは モーターバイクが所狭しと走り回るインドネシアよりははるかにましですが、それでも庶民の足はモーターバイクですので、日常的に車を使用すると事故の確率も高くなってきます。

モーターバイクの運転者の中には レース場での走りと思わせるような我々からすると極めて無謀・危険極まるな走りをするライダーも多いので、同僚たちと「彼らは、命が2つあると思っているよ。」と、よく揶揄したものでした。

幸いにして私は、専属ドライバーが付いていたので、通勤時、仕事への移動時には、そういった気苦労も無く移動ができました。ドライバーさんはこちらの都合でほとんど何時でも対応してくれましたが、彼らも都合により休みを取ることがあり、その時は自分で運転する必要が出てきます。

それは取引先のゴルフコンペに参加するため、早朝にゴルフ場に向かう時でした。何回も行った事があるゴルフ場だったので大丈夫と思っていたのですが、薄暗かったので左折の道を通りすぎそうになり 慌てて左に車線を変更しようとしたら、左側を走っていたモーターバイクの老人に接触してしまいました。

幸いにして彼は転倒しただけでケガはありませんでした。バイクも特に問題はなさそうなので、相手の連絡先を聞き、名刺を渡して連絡することにしました。後日、会社の現地スタッフが警察への連絡、事故の処理を全て取り計らってくれたので事なきを得ましたが、これが出張中、旅行中の事故だとしたら、頼る人も無く大変なことになっていたなと冷汗をかきました。

食中毒

東南アジアにいらっしゃる方の中には、いわゆる「水」が違うと言う事ですぐに下痢を起こすような方もみえると聞いたのですが、私は幸いにもそのような事は全く無く、屋台で食事しても問題無しでした。と言う事で、毎朝の朝食は近くの屋台で食すことが多く、雲吞麺(ワンタンミー)の味は格別でした。

ところが、油断していたわけではないのですが、一度だけ大変な下痢に襲われたことがありました。

それは、同僚たちと定期的にランチに行くレストラン行った時でした。帰宅してから腹の具合が悪くなり、そのあとは15分毎にトイレに駆け込み、一晩眠ることが出来ませんでした。後から思えばその時、食したシジミのような貝が原因ではなかったかと思いました。少し日光が当たる場所に置いてあったようです。

でも食べ物で痛い思いをしたのはその時だけで あとはほとんど、どんな食べ物も食することが出来たことは、とても幸せな事で駐在員生活に楽しみを与えてくれました。

ペナンの屋台の様子

あとがき

以上 海外出張中あるいは海外旅行中に起こりえる、盗難・交通事故・食中毒等について紹介しましたが、海外に行く場合にはやはり海外旅行保険を掛けておいた方が無難です。

特に交通事故・盗難で被害者になった場合は、24時間以内に警察署に届をして、必ずポリス・レポートをもらう事が必要です。これがないと保険請求ができません。又 事故の場合は国内でも同じですが、相手の車のナンバー、運転免許証番号、ID番号を必ず控えておき、できればスマホ写真を撮っておくとよいでしょう。

マレーシア・ペナン駐在時に体験・見聞きした事例は以上ですが、駐在員の中には感染症に罹ったり、全く新しい環境、本社からの重圧、期待の中で精神を病んでしまい帰国せざるを得なくなった方、最悪自殺のケースもあります。又 本人だけではなく帯同されたご家族の中には現地の生活になじめず、やむなく帰国される方もあります。機会があれば 次回、もう少しこういった海外駐在員の陰の部分についてお話ししたいと思っています。